3話 海
童謡オニシリーズ
鬼喰い姫(以下姫):♀・・・元神の見た目幼女の姫。
男:♂・・・姫に付き従う男。人としての意識を保った鬼
海の神(以下神):♂・・・鬼喰い姫に惚れ込んでいる元仙人。
女神:♀・・・姫の過去の姿。
鬼:♂・・・海の神が仙人の頃に襲い掛かっていた鬼。
村人:♂♀・・・茶屋の主人。
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- 唄 男)海は広いな大きいな
- 月が昇るし
- 日が沈む
- 男 「うっみ~!!」
- 姫 「海ごときで、童っぱか!」
- 男 「いや~な~んか、海って気分高ぶりません?」
- 姫 「はぁ・・・。お前は気楽だのう。」
- 男 「???どうしたんすか?」
- 姫 「特にこの海にはあまり近づきとうなかったんじゃがな。」
- 男 「ここの海に来たことあるんですか?」
- 姫 「まぁの・・・。こちらに鬼のうわさがあるので仕方ないが・・・。」
- 男 「そうとうっすね。いったい何が・・・」
- 神 「おおお!この気配は、愛しの我が君!!」
- 姫 「ふぅ。・・・やはりきおったか・・・。」
- 男 「なっ!何なんだよいきなり!」
- 神 「?ああん?何だお前は?この俺様に向かって
- 何だ?と言ったのか?」
- 姫 「やめい、うっとおしい。こやつはわしに従っている者じゃ。
- こやつはここらの海の神じゃ。」
- 男 「また簡潔な・・・。」
- 神 「・・・なぜだ?そこのお嬢から我が愛しの君の気配を感じる
- ・・・面影もどことなく・・・まさか!?愛しの君の隠し子!」
- 姫 「ふざけるな!本人じゃ!それにその呼び名
- やめいと言うたであろうが!?」
- 神 「おおう!その返しはまさに愛しの我が君!見目麗しかったのに
- そのようなお姿になられて・・・なんとおいたわしい・・・」
- 姫 「うっさいわ!」
- 神 「それよりも・・・。鬼を従えているとは、あの噂はやはり
- 真実(まこと)だったのですね。
- おっと!それよりも、この様な所で立ち話など・・・
- あちらにおいしい茶屋があるのですよ~!そちらに参りましょう!」
- 村人「いらっしゃいませ。3名さま、何になされますか?」
- 神 「いつものを3人前!」
- 村人「いつものですね。毎度ありがとうございます。」
- 姫 「神になっても俗世にまみれておるのか。」
- 男 「茶屋に通う神って・・・・」
- 神 「あれはいつのことであったでしょう・・・愛しの我が君との出会い・・・」
- 男 「え?唐突に語りだしましたよ?」
- 村人「ああ。このお客さんはいつもこうですよ(笑)女神様のお話が
- 大好きなんですよ~。わたしなんかもいつも聞かされておりますよ。
- ささ、お待たせいたしました。ごゆっくりどうぞ。」
- 姫 「うむ。すまぬな。」
- 神 「あの出会いは衝撃だった・・・まさに運命の出会い!?」
- 男 「あれ、ほっといていいんすか?」
- 姫 「適当に言わせておけ。」
- 神 「そう、あれは、俺様がまだ仙になってまだ間もない頃・・・。」
- ー回想ー
- 鬼 「(息切れ)はぁ、はぁ。き~さ~ま~!」
- 神 「(息切れ)はぁ、はぁ。も・・・もう、いいかげんにあきらめろ!」
- 鬼 「それは、こっちの言い文だぁぁぁぁ!俺のメシの
- 邪魔しやがて・・・」
- 神 「メ・・・・メシとか!目の前で人が襲われてたら
- 止めるに決まってんだろ!」
- 鬼 「俺が喰うのはお前らのような人間だからだぁ!」
- 神 「俺様はただの人間じゃねぇ!仙人になったんだ!」
- 鬼 「なら、よけいにうまそぉだなぁ。とっとと喰わせろぉ!」
- 神 「い・や・だぁぁぁぁぁぁ!?」
- 女神「くすくす。なかなかおもしろいやつじゃな。
- 鬼と痴話喧嘩する者など初めて見たわ。」
- 鬼 「あんだぁ?」
- 女神「わしはただの通りすがりよ。まぁそこな鬼よ。
- 今回は運がなかったと思うて諦めるのじゃな。」
- 鬼 「んだと?まぁ俺としては女のほうがありがたいんだがなぁ!」
- 女神「愚か者。ぶをわきまえよ!お前のようなやつが
- わしを喰らえると思うてか!?」
- 鬼 「う・・・く・・・くそっ!?」
- 女神「ふん。ん?そこな・・・仙になったと言っておったか?」
- 神 「ぽー・・・・・・!?うはっ!はいっ!俺様・・・
- いえ、わたくしめにございますか!?」
- 女神「鬼に気おされているようでは、まだまだじゃな。」
- 神 「はっはい!精進いたします!」
- 女神「どうした?助けられた礼も言えんのか?」
- 神 「はっ!これは失礼いたしました!命危うき所、お助け頂き、
- 恐悦至極にございます!」
- 女神「くすくす。言葉の使い方がおかしゅうなっておるぞ(笑)」
- 神 「わたくし、このような未熟者でありながら、
- あなた様を心よりお慕いしたく!?」
- 女神「ほぅ。わしに惚れたと申すか?」
- 神 「はい!愛しの我が君よ・・・」
- 女神「ふふふ。ならば、わしに見合うようなやつに早くなることじゃな、
- そのときにまた、その心持ちをきくとしよう。」
- 神 「そして、俺様は懸命に修行に励み、今までにない脅威の速さで
- この海の神へとのぼりつめたのだ!」
- 姫 「ふぅ。いい味じゃった。」
- 村人「へぇ。ありがとうございます。」
- 男 「あ、支払いはこの人でお願いします。」
- 村人「はい。ありがとうございます。お気をつけて。」
- 神 「・・・って!ちゃんときいていたのか?!あ、おいこら!待て!」
- 村人「お客さん。勘定お願いします。」
- 神 「なっ!わかっている!(汗)」
- 男 「・・・あの方、いちお神様なんでしょ?ほっといていいんっすか?」
- 姫 「めんどうなだけじゃ。捨て置け。」
- 神 「お~い!我が愛しの君~まだお伝えしたいことが
- 終わっておりませんよ~~~!!
- 私のふところにいる限り、逃しはしませんからね~!」
終