1話 かごめ
童謡オニシリーズ
鬼食い姫:♀・・・少女の姿だが、長年生きているためしゃべり方は大人っぽい。途中の唄
男:♂・・・姫に付き添う男。元人間の半分鬼。
ビビリだが、姫の保護者的にふるまう。
鬼:♂・・・古の言霊で呼び出される古き鬼。
村人(大人)(子供):♂♀・・・姫らが立ち寄った村の人。と子供。 始めの唄
ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
- 〔歌〕かごめ かごめ かごの中の鳥は
- いついつ 出やる 夜明けの晩に
- ツルとカメが滑った 後ろの正面だあれ
- ぐぅきゅるるる...
- 姫 「腹減ったのぉ...」
- 男 「その腹の音聞けばわかりますよ。」
- 姫 「次の獲物はまだか?」
- 男 「知りませんよ。当たるも八卦、当たらぬも八卦。」
- 姫 「おまえなんぞに言われんでもわかっておる!」
- 男 「へ~へ~。左様ですか。」
- ぐぅきゅるるる...
- 姫 「全く、普通の飯ではモノ足らぬとは...不便じゃ...。」
- 男 「唄でも歌って紛らわせてたらいいんしゃないっすか?」
- 姫 「唄...のう。」
- 姫 「か~ごめ、かこめ。か~ごのな~かのと~り~は~♪」
- 村人「あの...お嬢ちゃん。この村ではその唄は歌わんでもらえんかの?」
- 姫 「なぜじゃ?」
- 村人「その唄は鬼を呼ぶんじゃ。とにかく、唄わねぇでな。」
- 姫 「あ!おい!?」
- ...............
- 姫 「ふん♪ふふん♪」
- 男 「随分とご機嫌になりましたね。」
- 姫 「久々のご馳走にありつけるかもしれぬのだぞ?ふふん♪」
- 男 「またガセでも、八つ当たりしないで下さいね。」
- 姫 「さあな、それは保証できん♪」
- 男 「はぁ...まずは、話しを聞かないとですよ。」
- 姫 「じゃな!」
- 姫 「おい、そこな稚児よ。」
- 子供「?なんだぁ?おめも子供でねぇかよ。」
- 姫 「なんじゃと?ワシはこう見えてもじゃな...むぐっ!」
- 男 「まぁまぁ、あんな。ちょっと聞きたいことあるんだけど、いいか?」
- 子供「...?なん?」
- 男 「この辺りに鬼が出たって話はあるのか?」
- 子供「...それは...。」
- 男 「じゃあ、カゴメ唄って知ってるか?」
- 子供「...知っとるけんども、口にしたらいかんて言われとるんよ。」
- 男 「鬼を呼ぶから?」
- 子供「喰われた子もおるって...」
- 姫 「いい加減離さぬか!...おぬし、なぜそんな唄を知っておるのだ?」
- 子供「たまに、夜中に聞こえてきおる。村はずれの荒れ寺の方から...」
- 男 「当たり...ですかね?」
- 姫 「さぁの。日が暮れるまで待つしかなかろう。」
- 男 「うわぁ...本気っすか?俺暗いのとか嫌なのに...」
- 姫 「大の男が情けない。いい加減に慣れんか!?」
- 男 「そんな事言ってもぉ」
- 姫 「泣き言は聞かん!支度をするぞ。ただ待っても仕方ないからの。」
- 男 「うわぁ...荒れ寺で日暮れって最悪じゃないかぁ
- ...幽霊とか出ないよね?」
- 姫 「...はぁ。ゆくぞ。」
- 唄)かごめ かごめ かごの中の鳥は
- いついつ 出やる 夜明けの晩に
- ツルとカメが滑った 後ろの正面だぁれ?
- ..................
- 男 「なんも出ませんね?」
- 姫 「イラッ...ちっ。おまえは灯りでもつけておれ!」
- 男 「へ~い」
- 姫 「...むぅ。あちらの唄で試すか。...すぅ。」
- 唄)かごめ かごめ 籠の中の鬼は
- いついつ 出やる 夜更けの晩に
- 鶴と亀が滑った 後ろの正面...
- 鬼 『だぁれだ?』
- 男 「はぁ?」
- 姫 「後ろじゃ!?」
- 男 「うぉあ!いってぇ...って、あ~!首切れたぁ!?」
- 姫 「大したことないかすり傷で騒ぐな!くるぞっ!?」
- 男 「だってぇ。んもぅ。」
- 鬼 『くっくっくっ。旨そうな肉だぁ...くっくっくっ。』
- 男 「うわぁ...よだれ垂らして、嫌な笑い方。」
- 姫 「いうとる場合か、こやつは古き言霊に反応したんじゃぞ。
- とびきりの上玉じゃ...逃がすなよ?」
- 男 「へいへい。つ~訳だ。あんた、わりぃがおとなしくしててくれ。」
- 鬼 『肉...肉だぁ...喰わせろぉ~!?』
- 男 「おっと、力はこっちも自信があるんでねっ!」
- 鬼 『なぜだ...鬼のこの俺に...?その爪...貴様も鬼か?!』
- 男 「まぁ、人間であり、鬼でありってとこか?
- 俺は運が良かったからなぁ。ってことで、おとなしく喰われろ!」
- 鬼 『ぐるぁぁぁぁぁ!?』
- 姫 「まったく、時間がかかり過ぎじゃ。」
- 男 「ご馳走にありつけたんだから文句言わんでくださいよ。」
- 姫 「まあ、わしには、おまえという最終非常食もあるからのぉ。」
- 男 「それだけは勘弁して下さいよぉ。普通の人間に戻るために
- 頑張ってるのに...」
- 姫 「おまえは、一度鬼に落ちた人間が元に戻ると
- 本気で信じておるのか?」
- 男 「あなたの罪と罰も永遠ではないでしょう?元神の鬼喰い姫?」
- 姫 「だとよいがの。」
- 男 「まぁ、俺か正気を保てるのも、姫のおかげですからね。」
- 姫 「ふんっ。腹がヘる前に、次の獲物を探しにゆくぞ!
- 人がおる限り、鬼は尽きぬからな。」
- 男 「鬼は人が闇に落ちた成れの果て...貴方の中にも、
- 鬼が潜んで体を乗っ取ろうとしている。
- かもしれませんよ?鬼喰い姫に狙われませんように」
- 姫 「うるさいわ!?」
終