魔法使いと使い魔のおはなし
オリジナル台本
ステラ(17):♀ 魔法学校に通う代々の魔法使い
?(産まれたて):♀ 使い魔になる予定のモノ
先生:♂♀ 魔法学校の担任
親:♂♀ ステラの親
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- ステラ「純粋な魔法使いの家系というのは、今や珍しくとても貴重だ。
- 私はそんな家で産まれた。周りからは有望といわれるほど、
- 才としては幼いころから頭角を現していた。
- そして今、魔法学校に通う私は、クラスの中で一人だけ
- 使い魔がいないのだった。」
- 先生 「はい、来月は使い魔とともに行う実習も始まります。
- 使い魔の調教はしっかりとやっておくように!」
- ステラ「はぁ・・・。使い魔か・・・。」
- 先生 「ステラは後で私のところに来なさい」
- ステラ「使い魔とは、魔力を有するものが補助の役割として、
- 召喚する内なる自身である。
- 方陣を介し、呪(じゅ)をもって呼びかけに応じたモノと契約の下、
- その力を共有し、魂を繋ぐモノなり。」
- 先生 「ふむ、魔方陣も呪文も間違ってはいませんね。」
- ステラ「今朝も試しましたが、ダメでした。」
- 先生 「ステラ。自信をなくしてはいけませんよ。
- あなたはすべてにおいて、恵まれ、優秀なのですから。」
- ステラ「はい・・・。」
- 先生 「どうしても使い魔が召喚出来ない様であれば、
- その時は先生の使い魔で実習しましょう。」
- ステラ「ありがとうございます。失礼します。」
- ステラ「はぁ・・・」
- 親 「いいか、ステラ。私たちは他の者とは違い純粋な魔法使いの家系だ。
- だから使い魔にもそれなりの特別な意味がある。
- 彼らとはすでに産まれる前から魂で繋がれた縁があるのだ。」
- ステラ「産まれる前からつながれた魂・・・か・・・」
- 親 「初めて召喚できる使い魔はその魂で繋がれたモノだ。
- 永劫の契約で運命に導かれている。」
- ステラ「じゃあ、私の運命は?」
- 親 「どうしてステラの使い魔は出てこないのだろうね?
- 同じときに産まれているはずだけれど・・・」
- ステラ「私には使い魔はいないってことなの?永劫の契約なんて、
- ほんとうにあるかわからない。」
- ステラ「永久(とわ)の流れより盟約せし魂。わが呼び声に応えたまへ。」
- ? 「・・・って・・・」
- ステラ「ん?今・・・何か・・・?」
- ? 「・・・まって・・・」
- ステラ「え?・・・だれ?」
- ? 「・・・まってて!」
- ステラ「・・・まってて?今の声は・・・なに?」
- 親 「なに?声が聞こえた?」
- ステラ「はい。微かですが。まってて・・・と・・・。」
- 親 「うむ。それは聞き覚えがある声なの?」
- ステラ「いいえ。でも、何か懐かしいような・・・」
- 親 「そうか・・・まってて・・・確かにそう言ったのだね?」
- ステラ「そう言われてしまうと、微かだったので・・・たぶん。そうだと思います。」
- 親 「ならば、少し待ちましょう。召喚の儀も呼びかけるだけでも
- 疲れるでしょう。また聞こえてくるまではひかえなさい。
- 毎日のようにしていたのでしょう?」
- ステラ「そういえば、幼いころに1度だけ同じ様に声が聞こえてきた事があった。
- その声もとても微かな声で・・・」
- ? 「・・・ごめんね。」
- ステラ「誰に言っていたのか、なにに対してなのか。何もわからなかったけど、
- その時私は大泣きして、たいそう周りの大人たちを困らせた。
- 私自身も涙の意味はわからなかったが、その声を聞いて
- 胸が締め付けられるほどに悲しくなった。
- あの声の時と同じなのだろうか?」
- 親 「数日たったが、その声はまだ聞こえている?」
- ステラ「いいえ。あれ以来聞こえてこないわ。」
- 親 「う~ん。・・・そうか」
- ? 「・・・もう・・・ぐ」
- ステラ「!?・・・あ・・・いま・・・」
- ? 「・・・もうすぐ・・・まってて」
- ステラ「それからその声は日増しに力強く聞こえるようになった。
- もうすぐ、待ってて、
- それしか聞こえてこないけど、なぜだか私の胸は高鳴っていった。」
- ? 「もうすぐ、まってて!」
- ステラ「はっきり声は聞こえるけれども、いっこうに声の主はそれ以上のことがない。
- もし、本当に私の使い魔になるモノの声だとしたら・・・
- 実習まで後、1週間しかないんですけどぉ!!」
- 先生 「みなさん。使い魔の方は準備出来ていますか?
- 来週いよいよ実習となりますが、その実習について心構えを・・・」
- ? 「もうすぐ、まってて。・・・はやく、あいたい!」
- ステラ「あ・・・。感じる。何かとてもあたたかいもの。幸せのうれしい気持ち。」
- 先生 「ステラさん?どうしました?」
- ステラ「いえ、大丈夫です。大丈夫。」
- ステラ「悲しくもないし、なぜだか説明は出来ないけれど、
- 私はその時、涙が止まらなかった。」
- ? 「もうすぐ・・・あえる」
- 先生 「使い魔の件はどうですか?ステラさん。」
- ステラ「たぶん大丈夫です。間に合うと思います。」
- 先生 「そうですか。よかった。あなたの使い魔がどのようなモノか、
- とても楽しみにしています。」
- ステラ「不安はなかった。今まで感じていたあせりもない。
- 大丈夫、きっと応えてくれる。」
- 親 「すてら、声の方はどう?そろそろ召喚の儀をしてもいいころになった?」
- ステラ「3日後にするわ。今度は大丈夫。そんな気がするの。
- ちゃんと出迎える準備をしておかないと。」
- 親 「どんなモノが出てくるかわからないのに、どんなものを用意するの?」
- ステラ「なんとなくわかるの。感じてる。だから、とりあえず・・・そうね。
- お気に入りになるような、クッションから用意しようかしら。」
- ステラ「そして3日後、その日は見事な満月だった。私は力強く言葉をつむいだ。」
- ステラ「永久の流れより盟約せし魂。わが呼び声に応えたまへ。」
- ステラ「初めてする召喚の儀には必ず唱えなければならない。
- 続けて、召喚の呪文を唱える。」
- 親 「おお!今まで何も起こらなかった魔方陣から淡い光が・・・
- これはうまくいきそう。がんばって、ステラ!」
- ステラ「お願い。私の声よ届いて。私の声に応えて。」
- ? 「・・・・・・・ん~~っっぽん!」
- ステラ「・・・で・・・・でたぁ!」
- ? 「くぁ~~~・・・。」(あくび)
- 親 「なんと・・・」
- ステラ「・・・ちっさ。」
- ? 「にゅ?・・・はっ!きた!あえた!」
- 親 「まさか、こんな小さな竜の子とは・・・言葉も話せないのか・・・」
- ステラ「え?」
- ? 「きゅい!きゅい!きゅい!」
- ステラ「わたしにはちゃんと、"あえた、あいたかった"って聞こえるけど・・・。」
- 親 「え?じゃあ、ステラにしか聞こえないのだね。
- ステラは魂で繋がっているから。さあ、名前をつけておあげ」
- ステラ「なまえ・・・」
- ? 「きゅい?」
- ステラ「私の名前はステラ。使い魔であるあなたの名前は・・・」
- ? 「すてら、うまれる。で、うまれた。でも、さき、しんだ。だから・・・
- またうまれる。じかんかかった。でもやっとあえた!すてらあえた!
- うれしい!」
- ステラ「私もよ。ありがとう。また産まれてきてくれて。」
- ステラ「私は小さな産まれたての子竜を、私はそっと抱きしめた。」
- ステラ「ところで、もうすぐ使い魔との共同実習が始まるのだけれど、
- あなたはなにが出来るの?」
- ? 「きゅい?・・・そら、とべない。ほのお、はけない。うまれたて、
- すてらとはなす。それだけ!」
- ステラ「・・・・役にたたねぇ・・・」
終