第2話 交渉成立
『月の騎士達~ラストチルドレン~』
アズリック=ジェド:♂♀・・・地球に憧れる10代の男の子。幼い頃の記憶がない。
以下アズ
リー=リング:♀・・・アズとともに育った10代の女の子。家業である入港ドックの手伝いをしている。アズに対しては心配性。
以下リー(&劇中タイトルコール)
カルヴァン=サン:♂・・・アズの友人。地球生まれだが月で育った。色々なガラクタを集めて、リサイクル屋としてブックと二人で小遣い稼ぎをしている。面倒見のいい兄貴肌。
以下カル
ブック=クラウン:♂・・・アズの友人。カルと一緒にリサイクル屋として小遣い稼ぎをしている。機械いじりが得意。大人に対しては冷静になる。
以下ブック
アーサー=ギルガメッシュ:♂・・・独立国家軍ネビュラスの軍人。階級は中佐。右目に眼帯をしている。
以下ギル
軍人:♂♀・・・アーサー=ギルガメッシュと共に派遣された軍人。(&ナレーション:以下ナレ)
エリューメ:♀・・・アズが乗るアーマータイプの機動兵器。ホログラムの見た目10代の女の子。機械的な喋り方をする。(『』の部分は、エコー効果をつけられるならエコー付きで直接脳に語りかけているイメージ)アズがエリューメが言いにくかったため、エリーとあだ名をつける。
以下エリー
ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・
- ナレ 「その昔、人類は宇宙への憧れを抱いた。
- そして、地球の腐敗していく様を嘆いていた。
- 理想郷を求めた者たちが、今、求めるモノは・・・」
- ギル 「・・・条件を教えてくれないか。あと、コイツを外に出せるか?
- テストにちょうどいい相手が来たようだ。」
- アズ 「・・・相手?」
- ギル 「そう、紳士じゃないほうがね。」
- タイトルコール 「『月の騎士達~ラストチルドレン~』 第2話 交渉成立」
- ギル 「宇宙服はあるか?」
- カル 「いちお3つは」
- ギル 「3つか・・・ブック君、我々に少し付き合ってもらおう。
- カル君、アズ君。あと、リーと呼ばれていたかな?
- 君たちはここから今すぐ離れなさい。」
- カル 「何でブックだけ?!」
- ブック「俺はかまいません。
- だけど、アズもここに残さないといけませんよ?」
- ギル 「それは、条件とやらに関係しているのか?」
- ブック「アレは、アズにしか動かせない。」
- 軍人 「中佐。こちらにまっすぐに向かってきています。」
- ギル 「・・・わかった。ブック君とアズ君は宇宙服を着ろ。
- (軍人に向かって)君はあの子達を連れてドーム中央へ行け」
- 軍人 「中佐!彼らの言葉を信用するんですか?」
- ギル 「嘘をついているようには見えないからな。
- 戦争を知らない子供というモノは純粋なモノだ。」
- リー 「アズ、あの人達の言う事聞くの?」
- アズ 「あの人はそんなに悪い人じゃないと思う。わかんないけど。」
- ブック「カル、親父さんたちとドームを出る準備をしろ」
- カル 「ちょっと待てよ!あいつら軍人なんだから、
- あいつらに任せればいいんじゃないのか?
- 今なら逃げられるんじゃないのか?」
- ブック「あの人達はアレの機動性を見たいというのもあるんだろうけど、
- 敵が来るということを、あまり想定してなかったんじゃないかな?
- それに、ここを廃墟にするかどうかは、俺達しだいだ。」
- カル 「!?どういうことだよ。そんなにヤバイのが来るのか?!」
- ブック「いや、ヤバイのはコイツの方だ。」
- 軍人 「では、長居しない方がいいですね。
- ドックの方で合流はいかがですか?」
- ギル 「そうだな。それでいこう。」
- 軍人 「では、ご武運を」
- ギル 「はいはい。がんばって、生き残りますよ。」
- アズ 「ブック、ボクは何すればいいの?」
- ブック「いいか、アズ。この前教えた喧嘩の仕方覚えているか?」
- アズ 「うん。フェイントをかけるんだよね」
- ブック「指示はあの人にしてもらう。
- お前はそれを聞いて、敵にぶつかっていけ。」
- アズ 「わかった」
- ブック「出来れば敵のヤツは壊すなよ。
- パイロットにだけ衝撃を与えるんだ。」
- アズ 「大丈夫かな?動かし方もよくわかんないよ?」
- ブック「細かいことはアレがやってくれるさ。
- とにかく、敵のコックピットを揺さぶれれば何とかなる。
- 狙いは一つだ、お前なら出来る。いいな、アズ。」
- アズ 「わかった。失敗しても、怒らないでね?」
- ブック「お互い、死んでなかったらな。」
- カル 「アズ!ブック!待ってるからな!」
- リー 「アズ!無茶しないでね!」
- カル 「ほら、扉を閉めるぞ。リー。」
- ギル 「アズ君。外に出て、動けるようだったら、すぐに動け。いいな。」
- アズ 「わかりました。」
- ブック「外へのハッチ、開けます!」
- ナレ 「月へと向かっていた銀河連邦軍。
- 彼らは、火星交渉部隊であった。
- 火星での交渉に失敗した彼らは、補給もままならず、
- 木星にまで広がっていた戦火の中を抜けることは、無理だと判断し、
- 月での補給を計画した所だった。
- エリューメの起動、その一瞬の高エネルギー反応を、見逃してはいなかった。
- 噂にある、ロストテクノロジー。
- 彼らは、代わりとなる功績が欲しかったのだ。」
- アズ 「エリー、大丈夫?」
- エリー『節約モードに設定。音声のみの対応にナリマス。』
- アズ 「動けそう?」
- エリー『微量ながら、エネルギー補給シテイマス。』
- ギル 「敵の反応は1つだけか、様子見って所だろうな。」
- ブック「ギルさん、敵の機体だけ奪えますか?」
- ギル 「素人でその発言か?」
- ブック「アズなら、すぐに慣れますよ。それに、
- あなたは自信があるからここにいるんでしょう?」
- ギル 「わかった。出来るだけやってみるか。」
- リー 「あの時、私が見えたものは、アズが乗るロボットに対して、
- 光の線が、はしっていった事。
- その後、何度かドーム全体が揺れていました。
- カルは、皆に呼びかけをし、
- お父さんは、前々から地球へ避難する準備を整えていたのか、
- 地球へ連絡をとっていました。」
- カル 「リー!これ、アズの荷物な。」
- リー 「カル・・・・私達、どうなるの?ここも、戦場になっちゃうの?」
- カル 「すでになってるよ。被害が酷くならない様に、ここから離れるんだって。」
- リー 「・・・無事に戻ってきてね。アズ・・・」
- アズ 「何となくわかってきたよ。」
- エリー『シンクロ率47%。誤差修正します。』
- アズ 「でも、なんでだろ?なんか・・・なつかしい。」
- ギル 「次、上から来るぞ!右によけろ!」
- ブック「ビームを光に変換して、エネルギーとして吸収するか・・・
- これは恐ろしいな。」
- ギル 「今だ!背中にまわって一発かませ!」
- アズ 「よっと・・・これで・・・どーだ!!」
- 軍人 「現在、こちらのアーサー=ギルガメッシュと
- そちらのアズリック=ジェド、ブック=クラウンの3名が戦闘中です。
- 敵は銀河連邦軍のアーマータイプ機体1体のみ、
- 彼らがもどり次第、我々はここから出ます。
- 銀河連邦軍はこれだけではありません。
- 我々がひきつけますので、皆さんはその間に、地球へ向かってください。」
- カル 「あんたたちも地球に行くのか?」
- 軍人 「いいえ。我々は軍の方に戻ります。
- 目的も果たせましたので。」
- リー 「もくてき?」
- カル 「あんたたちの目的は、アズの乗ってる"アレ"だよな?
- アレはアズじゃないと、動かせないらしいけど?」
- 軍人 「ええ。アズ君には、我々と同行してもらう事になるでしょう。」
- リー 「アズに戦争させる気ですか?」
- 軍人 「彼にしか出来ないなら、その可能性は高くなります。」
- カル 「ブックはどうする気だ?」
- 軍人 「彼しだいですね。少なくとも、我々より何らかの情報を持っていそうなので、
- 同行してもらう事になると思います。」
- カル 「じゃあ、俺も行くぜ!」
- リー 「カル!何言ってるの?この人達は・・・」
- カル 「(セリフ少しかぶり気味に)アズとブックが行くんなら、
- 俺はこの人達について行く。」
- ブック「何を言ってるんだ。お前には家族がいるだろ?
- ちゃんと血の繋がった・・・な。」
- カル 「ブック!」
- リー 「ブック、アズは?」
- ブック「大丈夫。無事だよ。怪我もしていない。」
- リー 「よかった・・・アズ・・・」
- カル 「ブック、俺はお前たちと一緒に行くぜ。」
- ブック「俺とアズは元々独りだ。親も兄弟もいない。
- だけど、お前には親も兄弟もいるだろ?
- わざわざ危ないところに飛び込んで、心配かける必要もないだろ?」
- カル 「ああ、俺はお前らとは違うよ!だからなんだってんだよ!
- 俺にとっては、アズも、ブックも、兄弟みたいなもんなんだからな!」
- リー 「ちょっとカル!どこ行くのよ!」
- ギル 「うおっと!あぶねっ」
- 軍人 「中佐、出航の準備は出来ています。」
- ギル 「ああ、カル君はほっといていいのかい?」
- ブック「いいですよ。別に」
- ギル 「では、説明した通りだ。タイミングはこちらで出すから、
- うまくやってくれよ。」
- ブック「わかりました。リー。」
- リー 「ブック・・・アズと行くの?」
- ブック「君らを守るためさ。育ててもらった恩くらいは返すよ。」
- リー 「私も・・・。私も、アズとブックは家族だと思ってるから。」
- ブック「ありがとう、リー。帰れる場所は、皆の所だよ。俺達もね。」
- リー 「うん。」
- ギル 「アズ君とブック君が、出来るだけ早く、帰ってこられるようにするよ。
- リーちゃん。」
- 軍人 「アーマータイプ1機と、小型艦一隻です。火星への交渉部隊と思われます。」
- ギル 「今回のはあまり戦力はなさそうだったな。」
- アズ 「・・・リーにはちゃんと言っといた方がよかったかなぁ?
- 心配性だからなぁ・・・。」
- エリー『伝言を録音し、保存してオキマスカ?』
- アズ 「いや、いいよ。次、会えた時に言うから。」
- エリー『リー・・・とは、アズの特別な人なのデスカ?』
- アズ 「う~ん・・・友達。姉?妹?家族みたいな・・・かな?なんだろ?
- カルとブックも同じだよ。皆、大切なんだ。」
- エリー『リー・・・登録がアリマセン。登録シマスカ?』
- アズ 「ああ、そっか。さっき俺達と居た女の子だよ。リー=リング。」
- エリー『メモリーを確認。登録シマシタ。』
- アズ 「あ!ギルさんも登録しておいて!あの人も敵じゃないよ。」
- エリー『アーサー=ギルガメッシュ。登録シマシタ。』
- アズ 「でも、地球かぁ・・・。ボクも行ってみたいなぁ・・・。」
- エリー『地球に関するデータファイルが、1件アリマス。再生シマスカ?』
- アズ 「え?あ、うん。」
- エリー『画像データファイル1件。投影シマス。』
- アズ 「・・・これが・・・地球?」
- エリー『はい。データは最古の月基地より、撮影された映像となってイマス。』
- アズ 「青い・・・。地球って、こんなに青くて綺麗な惑星(ほし)だったんだね。」
- エリー『関連データ、"人工オゾン層再生計画"のデータファイルが破損シテイマス。』
- アズ 「それは、いいよ。いらない。」
- エリー『了解シマシタ。デリートシマス。』
- アズ 「いつか、こんな青い惑星(ほし)に戻るといいなぁ。」
- リー 「あのっ・・・」
- ギル 「ん?」
- リー 「アズの事、少し頼りないところもあるけど、よろしくお願いします。」
- ギル 「俺は、あいつらを死なせるために連れて行くわけじゃない。
- これから、生き残っていくための術(すべ)を教えるためだ。
- そして、君も生き残れ。次の世代を担うのだから。」
- リー 「はい。」
- ギル 「そろそろ時間だ。いくぞ。」
- ブック「アズ。」
- アズ 「ブック。みんな大丈夫だった?」
- ブック「ああ、リーはちょっと泣いてたけどな。
- あとカルに、俺らも家族だって怒られたよ。」
- アズ 「ははっ。そっか。・・・そうだね。」
- ブック「さて、お前がうまくやってくれたおかげで、問題はなさそうだ。
- 俺の方が反応速度は遅いからな。前衛は任せた。」
- アズ 「わかった。みんなを守るよ。絶対に。
- エリー、よろしくね。」
- エリー『戦闘モードオン。ご武運を。』
- アズ 「この時、あんな事になるなんて、思いもしなかった。
- 根拠もなく、うまくいくと思っていた。
- ボクは、この時初めて・・・
- "人を殺した"。」
- ギル 「アズはアーマータイプをおさえろ」
- アズ 「月の重力から離れると、やっぱり違うね。」
- エリー『敵機体、補足シマシタ。』
- ギル 「戦艦はこちらにひきつける。ブックはアズの援護を。」
- 軍人 「敵は新型かもしれません。」
- カル 「俺に出来ることは、何かないか?」
- ギル 「!カル君!向こうに乗っているんじゃなかったのか?!」
- カル 「家族にはちゃんと言ってきましたよ。
- 食い扶ちが減って助かるって言われましたけどね!
- アレはあんたに売るよ。俺達込みで。」
- 軍人 「今更、あとにもひけませんね」
- ギル 「わかった。条件はのもう。
- ふっ。みんなまとめて、俺が可愛がってやるよ。
- カル君はオペレーターを頼む。二人に指示を伝えてくれ。」
- カル 「了解!」
- エリー「戦闘は、とても簡単なモノでした。
- 敵は新型といっても、テストを兼ねた試作艦。
- 戦闘は予測されてはいないようでした。
- 彼らは、見たこともないような、アーマー機体に戸惑い、翻弄され、
- 追い詰められた結果、
- ・・最悪な選択肢を選んだのです。
- それに、一番最初に気がついたのは、
- ブック=クラウンでした。」
- ブック「おい、あいつら・・・」
- 軍人 「敵艦、側面よりエネルギー反応!」
- アズ 「これであの人、動けないよね?」
- エリー『アズ、敵艦に動きがアリマス。』
- ギル 「おい、あの方向は・・・まさか!」
- カル 「え?」
- エリー「彼らが狙い定めたモノは、背後で地球へと向かっていた、輸送民間船。
- リーたち、家族を乗せたその船に。」
- ブック「くっそぉ!」
- アズ 「エリー!」
- エリー『この距離では間に合いマセン』
- 軍人 「中佐!」
- ギル 「あんなもん仕込んでいるとはな。こっちも間に合う距離ではないか!」
- ブック「やらせるかぁ!!」
- エリー「間に入ったブック機と共に、輸送民間船の方角から、
- 爆発が起こりました。
- 爆煙はしばらく、はれませんでした。」
- アズ 「・・・ばくはつしたよ?」
- エリー『輸送民間船とブック機の反応を感知デキマセン。』
- アズ 「どういう・・・こと?」
- エリー『索的範囲外にいるか、大破したため、
- 感知が出来ない状態にあると思われます。』
- アズ 「リーは?ブックは?ねぇ、エリー。みんなはどこにいるの?」
- カル 「おい・・・ブック!応答しろ!ブック!」
- 軍人 「敵艦、沈黙しています。」
- ギル 「くそっ。俺の考えが甘かった。」
- アズ 「ねぇ、カル?」
- カル 「アズ?ブックが・・・応えねぇんだ。」
- アズ 「あいつが・・・みんなを・・・。」
- カル 「ああ、あいつだ。」
- ギル 「おとしまえは俺がつける。アズ君はそこにいろ」
- カル 「みんなの・・・かたきをとれ!アズ。」
- アズ 「武器、貰うよ!エリー!どこを狙えばあいつをつぶせる?」
- エリー『この位置なら、後方。動力部分が狙えます。』
- ギル 「やめろ!君らがやる必要はない!」
- カル 「やっちまえ!アズ!」
- エリー「敵戦艦が大破したあとも、弾切れになっても、
- アズはしばらく撃ち続けました。
- 爆煙がおさまっても、輸送民間船とブック機の姿は、
- 目視でも確認することはできませんでした。
- 敵、アーマータイプ2機、新型小型戦艦1隻を撃破。
- これが、ワタシ、エリューメとアズリックの初陣の結果となりました。
- "この戦闘データをメモリーに保存シマスカ?"」
- (次回予告、以下は3話内のセリフを引用していますので、セリフ的に繋がりはありません。)
- アズ 「(放心状態)・・・そっか、ボクは人を殺したんだ・・・。」
- エリー「(少し不思議そうに)ソレを理解する機能はワタシにはアリマセン。」
- カル 「(無理して明るくつとめる)俺も、同罪だ。」
- ギル 「(合言葉。小声で)・・・愛しきわがクイーンのもとへ」
- タイトルコール 「次回『月の騎士達~ラストチルドレン~』 第3話 火星の裏側」
- 軍人 「(自己紹介)私の名は・・・」
終