日本七夕の話

オリジナル台本

瀬織津姫(せおりつひめ)...天照大神の后:♀

天照大神(あまてらすおおかみ)...日の神様:♂

貴族...時の権力者:♂

神官...神を奉(まつ)る者:♂♀

ナレーション:♂♀

ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

  1. 瀬織「今、なんと?なんと申した?」
  2. 神官「はい。その......天照様を女神(にょしん)として奉ると。」
  3. 瀬織「なんという.........して、天照様は。あのお方はなんと申されたのです?」
  4. 神官「はい。時のさだめにお任せになると......」
  5. 瀬織「そうですか......少し。少し時間を。」
  6. 神官「はい。重々お考えのほどを。」
  7. 瀬織「あのお方を女神(にょしん)として.........」
  8. ナレ「7月7日はみなさまご存じの通り七夕でございますれば、
  9.     その説は古来中国よりのお話を素に、古き日本の説が混じり合い、
  10.     現在の皆様がよく知るお話へと成したのだとか。
  11.     しかし、その日本の古きお話を紐解くと、
  12.     とある忘れ去られし女神(おんながみ)の記述が
  13.     その姿を現すのでございます。
  14.     この度は、その女神(おんながみ)のお話を幻想を交えてお話ししましょう」
  15. 神官「瀬織津姫様に申し上げましたところ、心中は複雑なようでございます。」
  16. 天照「まぁ、そうであろうな。なんせ、旦那がいきなり女として扱われる!
  17.     となると、気が気ではあるまい。ははははは。(笑)」
  18. 神官「あ...はぁ。(汗)」
  19. 天照「我ら神は変わりゆくものではない。変わりゆくのは終わりあるモノ達。
  20.     我らはその変化を見定めるまで。」
  21. 神官「今一度、瀬織津姫様には説く所存でございます。」
  22. 天照「うむ。瀬織津姫にも、よきにしてくれ。」
  23. 神官「はい。」
  24. ナレ「所変わり貴族の屋敷」
  25. 貴族「まだか。まだ説き伏せられんのか!」
  26. 神官「申し訳ございません。」
  27. 貴族「こちらは神のような無限の時はないのだぞ?適当になだめればよい!」
  28. 神官「しかし、それでは......」
  29. 貴族「神とて、奉る者が居なければ意味をなさぬモノ。そうでおじゃろ?」
  30. 神官「.........はあ。今しばしのお時間を」
  31. 貴族「早ようにな」
  32. ナレ「天照大神は日の神。すべてに対し、産み出し、慈しむ。
  33.     瀬織津姫は水の神。育み、守る。この二神なくば、
  34.     たちどころに生は途絶えてしまうでしょう。
  35.     しかし、時のさだめとは残酷なものでございます。」
  36. 瀬織「なに?妾にこの地を離れよと申すか?」
  37. 貴族「瀬織津姫におきましては、他の地にて良きところを配しております。
  38.     そちらへ御移りいただきたいと」
  39. 瀬織「そなたは、妾がこの地にいる意を知らぬとは申すまいな。」
  40. 貴族「ええ。存じております。ですから申し上げているのです。
  41.     天照大神様はすでに了承を得ております故、これは瀬織津姫様への
  42.     懇願ではありませぬ。すでに定めたことでございます。」
  43. 瀬織「妾の意を介さずそのような申し開きを.........
  44.     これが、これが時のさだめというのか。」
  45. ナレ「天照大神と瀬織津姫は夫婦同士、その仲むつまじい夫婦が
  46.     別居を言い渡された。というような状況でございます。
  47.     かくも哀しや。」
  48. 瀬織「本当にこのままでよいのか?妾は...妾は......」
  49. ナレ「そして舞台は天岩戸となります」
  50. 神官「瀬織津姫様。我らが話を聞いて下され。」
  51. 貴族「いったいなにをしておるのじゃ!」
  52. 神官「はい。天岩戸に瀬織津姫様がお隠れになられて。」
  53. 貴族「ふんっ!飽いてすぐに出てこよう。
  54.     それよりも、川が氾濫を起こしておる。
  55.     それを祈祷で何とかするのじゃ。」
  56. ナレ「さてはて、天岩戸に身を潜めた瀬織津姫。その真意とは?
  57.     岩戸に潜んではやふた月とあいなりました。」
  58. 瀬織「神として、人のような感情でこの様なこと.........。
  59.     しかし、妾が荒ぶれば災いを呼び、それは妾とて真意ではない。
  60.     この想いやいずこへむかえば......」
  61. 天照「まだ瀬織津姫は籠もっているのか?」
  62. 神官「はい。そのお心やお聞かせ願えぬままにございまして。」
  63. 天照「瀬織津姫よ。わしはどのようなカタチであろうと、
  64.     そなたへの想いは変わらぬ。
  65.     そなたがそこまで気を病むことではないぞ。」
  66. ナレ「返事がない。ただのしかば.........げふん。
  67.     岩戸は堅く閉ざされ、開く気配はありません。」
  68. 天照「うむ...なにか良い策はないものか。」
  69. 神官「様々な手段を尽くしましたが...これ以上思い当たるものが......」
  70. 貴族「おお、これは天照大神様。未だに瀬織津姫様の真意が
  71.     わからずでございますなぁ。
  72.     あ!明後日(みょうごにち)の宴の準備が出来ております故
  73.     お忘れなきよう。」
  74. 天照「!?それだ!宴はこの場、天岩戸にて執り行おうではないか!」
  75. 貴族「は?ここで...でございますか?」
  76. 天照「うむ。楽しい宴の音あらば、瀬織津姫の心も和らぎ
  77.     その姿を現してくれるだろう。」
  78. 神官「宴ですか...それは思いもよりませんでした。」
  79. 天照「やってくれるな?」
  80. 貴族「あ...はあ。かまいませぬ。」
  81. ナレ「そしてドンチャンドンチャン騒ぎ出す。天岩戸で大騒ぎ!」
  82. 瀬織「.........あのように嬉しそうに.........。すべては妾の杞憂か。
  83.     あの方がよかれと思うこと、妾がいつまでも
  84.     反しているわけにもいくまいな。」
  85. 天照「あはははは!ほうれ。小さき悩みは捨て、楽しめ!」
  86. 瀬織「天照様...」
  87. 神官「おお!堅く閉ざされていた天岩戸が......」
  88. 瀬織「申し訳ありませぬ。天照様が御納得ならば、妾はそれに従います。」
  89. 天照「うむ。」
  90. 貴族「では、宴が終わり次第。取りかからせていただくがよろしいか?」
  91. 瀬織「ええ。ただ...」
  92. 貴族「ただ?」
  93. 瀬織「こうして、天照様とお会いすることが困難になるのなら、
  94.     せめて一日でよい。今宵のような空に河がかかる日に
  95.     確実にその契りを交わせるようにしてはくれまいか?」
  96. 官「私からもお願い申しあげます。」
  97. 天照「そうだな。その計らいわしとしても糧になろう」
  98. 貴族「あい、わかり申した。では、今宵のような空に河がかかる日。
  99.     その一日は夫婦としてお二人をお奉りいたしましょう。」
  100. 瀬織「妾はいついかなる時も、天照様をお慕い申しております。」
  101. 天照「わしもだ。瀬織津姫。」
  102. 神官「ようございました。本当に。」
  103. 貴族「これで、女帝(にょてい)を据えるのに手回ししやすくなる
  104.     というもの。まったく、手間をかけさせられたものよ」
  105. ナレ「空の河。天の川がかかる今宵7月7日。
  106.     天照大神と瀬織津姫は、互いの愛を深めあう契りを交わしたのでした。
  107.     しかし、語り継ぐにはさわりあり。
  108.     瀬織津姫は虚(きょ)となり闇へと忘れ去ることとなったという。
  109.     実際の記述等、異なりましょうが、このお話は
  110.     あくまで夢、幻にございます。」


無料でホームページを作成しよう! このサイトはWebnodeで作成されました。 あなたも無料で自分で作成してみませんか? さあ、はじめよう