リナ一人旅

スレイヤーズ

リナ・インバース:♀(CV林原めぐみ)

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  1. 青い空!白い雲!立ち込める噴煙(ふんえん)!
  2. ・・う~みゅ。
  3. 我ながら、ちとやりすぎたかなぁ・・・と、思わなくもない。
  4. それはうららかな昼下がりのこと・・・。
  5. あたし、美少女天才魔導士こと、リナ・インバースは、
  6. のんびりとそのひと時を満喫(まんきつ)していた。
  7. 隣町までは草原をはさんで目と鼻の距離。
  8. なので、あたしはピクニック気分を味わっていたのだが・・・。
  9. そこに明らかに似つかわしくない風体(ふうてい)の
  10. ごっついおっちゃんが2人。
  11. お互い違う街から同じ歩幅、タイミングでやってくる。
  12. 同じ様な油ギッシュで同じ様なヒゲ配置。
  13. まるで鏡で映したような見事なシンメトリー・・・。
  14. ごっついおっちゃんだけど。(汗)
  15. おっちゃん達はあたしのところに来るなり、
  16. お互いをにらみ合い、同時にこう言った。
  17.  『天才美少女魔導士、リナ・インバースどのですね?』
  18. 見事なハモリ具合で声もごっついけど・・・(汗)
  19.  『わしが先に声をかけたんじゃぁ!!』
  20. と、またハモった。
  21.  『リナ殿!わしですよね!わしの話をきいてくだされ!!』
  22. 同時にしか行動できんのか!このおっちゃんらは。
  23. あたし的には正直どっちでもいいというかぁ。
  24. このせっかくのピクニック気分の乙女心をどうしてくれようか!とか、
  25. そんな風に思っていたわけで・・・。
  26. それから、日が暮れるまでおっちゃん達の押し問答。
  27. というか、"あたしを雇う"とか終わらない競(せ)り合いが行われていた。
  28. せっかくの気分が台無しじゃぁ(泣)
  29. ちなみに、おっちゃん達があたしを挟(はさ)んで
  30. ずっとハモり会話していたことは言うまでもない。
  31. とりあえず、あたしは2人を無視で決め込み進行方向の街へ向かった。
  32. なんだろうなぁ・・・。
  33. 相手もしていないのに、この疲労感って・・・。
  34. そして、後ろにいるおっちゃん1人が大喜びしているのは、そっとしておこう。
  35. あたしも色々な所を旅している以上、似た様な街や村などは、
  36. まぁまぁ無いこともない・・・。
  37. が、隣町に感化されて・・・というにはあまりにもそっくりというか、
  38. 丸写しというか・・・。
  39. あたし、来る方向間違えていないよね?
  40. あ!宿屋の場所は一緒だけど、名前が違うや!よかった。
  41. しかし店の配置や公園の位置まで、
  42. まるでおっちゃん達の様なシンメトリー・・・。
  43. ん?そういえばあのおっちゃん、どこかで見た様な・・・。
  44. その謎は、次の日にすぐに解けた。
  45. 町長の使いだという女性が、朝っぱらからあたしを訪ねてきたのだ。
  46. そして、公園の脇を通る時、公園の中心にある銅像に目がいった。
  47. マッチョムキムキなあのおっちゃんだ。
  48. 銅像の下には、"親愛なる町長"と・・・。
  49. あ~・・・これか。
  50. 確かに昨日も見た。
  51. 隣町の公園で。むこうは確か、"敬愛(けいあい)なる町長"だったかな?
  52. それもこれまた、まるっきり同じポーズだった。
  53. ・・どこまでもそっくりだなぁ。この双子。
  54. かくしてあたしは、ごっついおっちゃんの話を聞く羽目になるのだった。
  55.  『いや~、リナ殿!よく来て下された!!ささ、どうぞ。どうぞ!』
  56. ・・やっぱし、朝でもあつくるしひ。
  57.  「あのぉ、ところでなぜ、あたしがリナ・インバースだと?」
  58. いちお、人違いですぅ。と言えるニュアンスは残してある。つもり。
  59.  『いやー、旅の商人が"この近辺の盗賊のアジトが壊滅(かいめつ)した"
  60.  と聞きましてなぁ。それも、1人の美少女魔導士にらしい・・・
  61.  ということで、もしやと思いましてな?ガハハハハハ』
  62. ああ、言い逃れしにくいなぁ・・・。
  63. まだその盗賊から拝借(はいしゃく)したお宝が、
  64. 懐(ふところ)にあるんだよねぇ・・・。
  65. ま、いいか。
  66.  「んで?あたしに何の御用です?」
  67. もういいや。さっさと面倒ごとを片付けよう。
  68. おっちゃん・・・もとい、町長によると。
  69. 隣町には双子の弟が町長で、何でもかんでも真似をする。
  70. どちらがより優秀なのか決めて欲しい。
  71. ・・という兄弟げんか並みの話だった。
  72.  「そんなこと、わざわざあたしじゃなくっても・・・。」
  73.  『いや、わしの方が優(すぐ)れているという証(あかし)に、
  74.  弟のものは木っ端微塵(こっぱみじん)にしていただきたいのです!
  75.  そこでリナ殿の力が!!』
  76. は?
  77. あたしは何か?破壊要員か??
  78.  「えっと・・・具体的に何をすれば?」
  79. なんとなく察(さっ)しはつくが、いちお確認してみる。
  80.  『そうですな。まず、あちらの街の公園の趣味の悪い銅像を
  81.  壊してきていただけますかな?』
  82. ・・やっぱし。"自分も同じ趣味の癖して"、
  83. なんてことはけして口には出さないけれど。
  84. あたしは適当にやればいっか。と思い、徒歩数10分の隣町へ。
  85. 銅像の前に来ると、どこからかぎつけたのか、
  86. ごっついおっちゃん・・・もとい、
  87. この街の町長弟の方がこちらに向かってくる・・・。合ってるよね?
  88.  『おお~リナ殿!わが街に戻っていただけるとわっ!
  89.  どうですかな?趣味のいい銅像でしょう?ガハハハハ!!』
  90. ・・ほんと、どっちもどっちだなぁ。
  91.  『ところでリナ殿、もしや我が兄と何かを交わした・・・
  92.  という事はないでしょうな?』
  93. こりは・・・わかってて言ってるな?
  94.  「あ~・・・ん。別に交わしたという訳では・・・。」
  95. ひとまず、前金の金貨は貰ってるけど。
  96.  『リナ殿。こちらはその倍だす。といったらどうなさいます?』
  97. ピクッ・・・倍かぁ・・・。
  98.  「前金でぇ、半額は貰っておきたいんですけどぉ・・・。」
  99.  『よいでしょう!私のお願いをきいていただけるのなら。』
  100. と、話し出した内容は、まるっきし町長兄と同じだった。
  101. ひとまず、前金を貰い、適当に銅像と似た色の石を拾い、
  102. 町長兄のもとへ・・・。
  103. 残りの金貨を貰い、同じくそこらの石で町長弟のもとへ・・・。
  104. よし!これで無事に解決!!
  105. とは、うまくいかなかった・・・。
  106. その日はそのまま弟の街で泊まったのだが、
  107. 夜明けとともにそれはやってきた。
  108.  『リナ殿!!どーいうことですか!!』
  109. あ、・・・あ、・・・ああああああああ~!
  110. あつっくるしいおっちゃんの目覚ましハーモニー・・・。
  111. どうやら自分の目で木っ端微塵になっているであろう銅像を
  112. 確認しに行った2人が同時刻、あたしのところに講義に来たのである。
  113. ・・いやだ。目覚め一番でこんな光景なんて。(泣)
  114. あたしは狸寝入りを決め込むことにした。
  115. 時間が来れば秘書か何かが迎えに来るだろうと・・・。
  116. しかし、そこまでは待つ余裕はあたしには無かった。
  117. すぐそばで、油ギッシュな兄弟ゲンカハーモニーが繰り広げられ、
  118. こともあろうにそれは、あたしにも飛び火した。
  119.  『こんなずんぐり小娘なんぞをお前が雇ったりするからだ!』
  120. ・・ずんぐり小娘?ピクッ
  121.  『ぼったくり破壊神に頼む方が悪い!』
  122. ・・ぼったくり?・・・破壊神??ピクッピクッ
  123.  『胸も成長しとらん小娘に任せる悪趣味め!』
  124. む・・・ピキピキピキ。ぷっちん。
  125. あたしはゆっくりと、そして静かに起き上がりながら、
  126. その言葉を唱えていた。
  127.  「黄昏よりも昏きもの
  128.  血の流れより紅きもの
  129.  時の流れに埋もれし
  130.  偉大な汝の名において
  131.  我ここに闇に誓わん」
  132. おっちゃん町長達が何かの気配を感じ、ケンカを中断し我に返る。
  133.  「我らが前に立ち塞がりし
  134.  すべての愚かなる者に」
  135. ゆっくりとこちらを確認するが、もう遅い!!
  136.  「我と汝が力もて
  137.  等しく滅びを与えんことを」
  138. 必死に止めようとくらいついてくるおっちゃん町長達に向かって、
  139. あたしは何のためらいも無くそれを打ちはなった。
  140.  「ドラグスレイ~~~~~~~~ッブ!!」
  141. 結果。あたしの放ったドラグスレイブは、弟町長の銅像を粉々にし、
  142. 隣町の兄町長の銅像をも木っ端微塵にするという威力だった。
  143. ふむ・・・。2つの街半分づつ、これで両成敗!
  144. 依頼はきちんとこなしたんだから、金貨は貰ってもいいよね?
  145. 2人並んで仲良くピクピク焦げている町長達を横目に、
  146. あたしは宿・・・というか、この2つの街をあとにした。
  147. 幸い、あの草原は無事であった。
  148. うん、青い空、白い雲!
  149. 今日も、いい天気だ~♪
  150. ・・その後、その街や町長の仲がどうなったか、
  151. なんてあたしは知らない。 
  152. もう2度と、あの街に行くことはないだろう・・・。
  153. ってか、行きたくな~い!!!

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