第1話 目覚め
『月の騎士達~ラストチルドレン~』
アズリック=ジェド:♂♀・・・地球に憧れる10代の男の子。幼い頃の記憶がない。
以下アズ
リー=リング:♀・・・アズとともに育った10代の女の子。家業である入港ドックの手伝いをしている。
以下リー(&劇中タイトルコール)
カルヴァン=サン:♂・・・アズの友人。地球生まれだが月で育った。色々なガラクタを集めて、リサイクル屋としてブックと二人で小遣い稼ぎをしている。面倒見のいい兄貴肌。
以下カル
ブック=クラウン:♂・・・アズの友人。カルと一緒にリサイクル屋として小遣い稼ぎをしている。機械いじりが得意。大人に対しては冷静になる。
以下ブック
片目の軍人:♂・・・名前はアーサー=ギルガメッシュ。独立国家軍ネビュラスの軍人。
以下片目
軍人:♂♀・・・片目の軍人と共に派遣された軍人。(&ナレーション:以下ナレ)
エリューメ:♀・・・ホログラムの見た目10代の女の子。機械的な喋り方をする。(『』の部分は、エコー効果をつけられるならエコー付きで直接脳に語りかけているイメージ)アズがエリューメと言いにくかったのでエリーと呼んだ。
以下エリー(&アナウンサー:以下アナ)
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- ナレ 「人はなぜ争うのか?
- 求めるものは、権力。自由。そして・・・。
- 人々が宇宙へ旅立ち、月日が流れ・・・。
- 母なる地球は、捨てられた惑星(ほし)となっていた。」
- アズ 「今日も、変化なしっと。」
- リー 「ご苦労様。地球観察なんて、してるのはもう、あなたくらいよ?アズ。」
- アズ 「ボクの仕事なんだよ。これが。」
- リー 「それは、趣味!・・・でしょ?」
- アズ 「黒くよどんでしまっても、あの大地は生きているんだ。
- 生命だって、生きてる!」
- リー 「はいはい。それよりも、朝食の時間よ!
- アズが遅れると、私まで怒られるんだから!」
- アズ 「ああ、ごめん。行こうか。リー。」
- ナレ 「月にはいくつかのドームが点在し、それぞれが
- 大家族のように暮らしていた。
- 地球管理。それが、月のドームが造られた理由。
- しかし、時がたった今、地球で生きているモノたちの数を
- 把握してはいなかった。」
- カル 「おはよー!おふたりさん!
- なぁ、聞いたか?木星のほうで、ドンパチがあったそうだぜ?」
- リー 「おはようカル。もう木星まで来ているの?近くなってきたのね。」
- アズ 「おはよう。月は中立衛星だよ。心配する事ないさ。」
- カル 「そうだぜ!武器なんて欠片もないんだから、
- こっちまでこねーよ。な、リー。」
- リー 「もう。二人とも、気楽でいいわねぇ。」
- カル 「(アズに耳打ち)それよりアズ。昨日、すげーもん見つけたんだ。
- いつもの場所に運んであるからよ。後で来いよな。」
- アズ 「(ひそひそ声で)わかった。」
- リー 「男二人でこそこそと、いやらしい話でもしてるのかしら?」
- アズ 「ちがうよぉ。」
- カル 「リー、アズも年頃の男なんだから、察しろよ~。」
- リー 「さいってい!」
- ナレ 「彼らが進むのは・・・始まりか、終わりか。」
- タイトルコール 「『月の騎士達~ラストチルドレン~』 第1話 目覚め」
- 軍人 「ロストテクノロジーって、どんなモノでしょうか?」
- 片目 「さぁねぇ?噂だからな。地球の忘れモノってな。」
- 軍人 「それが本当に地球に?」
- 片目 「あるかどうかもわからんモノに、すがるとこまできているわけだ。」
- 軍人 「中佐はどう見ておられるんですか?」
- 片目 「ん?」
- 軍人 「この戦況です。」
- 片目 「まだなんとも言えんなぁ。ロストテクノロジーとやらが、
- "使いものになるモノ"
- だったら、有利になるかもな。」
- 軍人 「ありますかね?」
- 片目 「ないこともない・・・だろうが、
- 今更使えるのかどうか。だな。」
- 軍人 「中佐はこの任務に志願した。と、お伺いしたのですが、
- 信じていたというわけではないのですか?」
- 片目 「ははっ。探しものなら、ていよく中心から外れて、
- のんびりサボれるだろ?」
- 軍人 「なるほど。中佐を理解いたしました。」
- 片目 「理解したなら、そろそろ通信が繋がるだろう。
- 月で一休みといこうじゃないか。」
- アナ 「現在も、銀河連邦と、独立国家軍ネビュラスとの交戦は、
- 激しさを増すばかりとなっております。
- なお、火星圏では、自衛のみの意思を示し、
- どちらにも同盟はしないと発表しています。
- 続いてのニュースは・・・」
- アズ 「ねぇ、カル・・・これは何?たまご?」
- カル 「小型船・・・かな?掘り起こすのに苦労したんだぜ?」
- アズ 「・・・違う・・・。ボクには、女神に見えるよ。」
- カル 「はぁ?アズよ。女神って、どんなものか知ってるか?」
- アズ 「知ってるよ。でも・・・」
- カル 「こんなたまごの何が女神なんだか。」
- アズ 「ねぇ、これって動くの?」
- カル 「いや、色々試してみたけど、うんともすんとも。
- 金属的には売れそうだからな。バラすの手伝ってくれよ。」
- アズ 「うん。・・・ちょっと触ってもいい?」
- ブック「触ってもいいけど、傷とかつけるなよ。アズ。」
- アズ 「ありがとうブック。」
- カル 「なんかわかったか?」
- ブック「完全に沈黙。中の回路も古すぎてお手上げだ。」
- カル 「バラし過ぎない方がいいかもな。」
- アズ 「すごいなぁ・・・。」
- カル 「ブック、どっち側に吹っ掛けるんだ?」
- ブック「今の状態なら、ネビュラスの方が吹っ掛けやすそうかな。
- でも、安全を考えると、火星に回したほうがいいかもしれない。
- 命あってのものだね。だしね。」
- カル 「火星か・・・」
- ブック「そういえば、噂が流れているらしい。」
- カル 「うわさ?軍の通信傍受(ぼうじゅ)してか?」
- ブック「火星に交渉に来てた船からね。
- 地球には、ロストテクノロジーが隠されている・・・ってな。」
- カル 「ロストって・・・遺産って事か?そんなもんつかえんのかよ?」
- ブック「なんでも、大昔の戦争の最終兵器らしいよ。
- 使われる前に終結して、そのまんま捨てられてるとか。」
- カル 「まじでか・・・。でも、地球なぁ・・・。」
- ブック「もしかしたら、月にもあるかもしれないぜ?」
- アズ 「ん?ここで開くのかな?」
- カル 「兵器がか?まさかぁ。」
- ブック「たとえば、アレがそうだったり・・・
- って!?アズ??」
- カル 「え?あっ!!お前何したんだよ!」
- アズ 「え?ここかなって思ったら、なんか開いたよ?」
- ブック「開いたよって・・・そんな簡単に」
- アズ 「ここだよ。ここ開けて、中のハンドルひねったら開いたんだ。」
- ブック「俺たちがどんなに調べてもこんな部分見つからなかったのに・・・。」
- カル 「中は?入れそうか?」
- ブック「(セリフかぶせ気味で)ちょっと待てカル。」
- カル 「え?」
- ブック「アズ、中の様子見てくれ。動きそうなら動かしてもいい。」
- カル 「ブック、俺たちも」
- ブック「いや、アズだけじゃないとダメだ。・・アズが選ばれたって事か・・・」
- 片目 「すいません。このあたりのドームの地図、いただいてもいいかな?
- ああ、ちょっと物好きでね。歴史研究ってとこかな。
- ありがとうお嬢さん。」
- 軍人 「(片目に耳打ち)中佐!微かですが、エネルギー反応が。」
- 片目 「反応?」
- 軍人 「不明のエネルギー源です。一瞬でしたが確かに。」
- 片目 「地図のどこら辺になる?」
- 軍人 「この辺りですかね?今は使われていない施設のようです。」
- 片目 「今は?」
- 軍人 「沈黙しています。確認にむかいますか?」
- 片目 「そうだな。君は有能だ。辺境には惜しい存在だ。」
- 軍人 「では任務が終わったらとりなして下さい。」
- 片目 「考えておこう。当たりが出たらな。」
- 軍人 「よろしくお願いします。」
- アズ 「中はけっこうシンプルみたい。座るところがある。」
- ブック「他には?何がある?」
- アズ 「そんなに広くない。モニターみたいなのと、色々ボタン?」
- ブック「そこに座ってみろ。」
- アズ 「いいの?」
- ブック「お前が選ばれたのなら、抵抗はないはずだ。」
- カル 「本当に、大丈夫なのか?ここからじゃ暗くて何も見えないけど・・・」
- ブック「見えないようになってるのさ。俺たちは少し離れよう。動くぞ。」
- カル 「え?!まじかよ」
- エリー『オカエリナサイ』
- アズ 「え?」
- カル 「まじで動くのか?」
- ブック「さぁ?アズしだいかな?」
- アズ 「・・・だれか・・・いるの?」
- エリー『識別認識照合クリア。
- 登録名エースで間違いはアリマセンカ?』
- アズ 「エース?ボクはアズ。アズリックだよ?
- 君は何?」
- エリー『アズリック・・・リストへの登録はアリマセン。
- 識別登録を優先シマスカ?』
- アズ 「しきべつ?よくわかんないけど、ボクの名前はアズリック=ジェド。君は?」
- エリー『アズリック=ジェド。エースの登録項目、
- 氏名をアズリック=ジェドに変更いたしました。
- 脳の記憶神経の損傷を確認。起動するにあたっての問題はアリマセン。』
- アズ 「起動?動くの?・・・え?何?なんかキラキラしたものが・・・
- お、女の子!?」
- エリー「オカエリナサイ。アズリック=ジェド。記憶の損失の可能性がアルので、
- チュートリアル機能を設定します。
- ワタシはエリューメ。
- セレナールの試作機として作られました。」
- アズ 「え・・・りゅー・・め?」
- エリー「ハイ。アナタとの適正がマッチングしたので、
- アズリック=ジェドの専用機になります。」
- アズ 「ボクのことはアズでいいよ。皆そう呼んでる。
- えっと、エリョ・・・エリュー・・メ?君は・・・女神なの?」
- エリー「了解いたしました。アズ、呼びにくければ、お好きに呼んでください。
- ワタシは女神ではアリマセン。
- 二足歩行型戦闘用機動兵器デス。」
- アズ 「・・・機動兵器?ロボットってこと?」
- エリー「起動、展開シマスカ?」
- アズ 「てんかい?起動はしてもいいって言ってたよ」
- エリー「起動します。ベルトをきちんと締め、周辺の安全を確認してクダサイ。」
- カル 「アズだけじゃ、やっぱ心配じゃね?」
- ブック「いや、開くぞ。たまごの殻が」
- エリー「展開シマス。」
- アズ 「うわわわわわわわわぁぁぁ。」
- 軍人 「たまごの形から、マントのような光の帯にひらいた・・・。
- これは、人型兵器・・・。」
- 片目 「こいつは見事だな。まるで "ビーナスの誕生" のようだ。
- どうやらとんでもないお宝だったようだな。」
- カル 「なんだこれ・・・。人型ロボット?」
- ブック「まるで、古代の騎士のようだな。」
- 片目 「こんなにも美しいモノとはね。これがロストテクノロジーってやつかい?」
- カル 「!?誰だ?」
- 片目 「おっと、動かないでもらおうか。
- ちょっと拝見させてもらうぞ。」
- ブック「・・・あんた達は?軍人?」
- 軍人 「両手を挙げて、ひざをつけ。」
- 片目 「俺たちは、独立国家軍ネビュラスの者だ。コイツを探してたんだ。」
- 軍人 「中佐!?」
- 片目 「彼らは一般の少年たちだ。あまり手荒な事をしたくはない。」
- カル 「(ぼそっと)銃を突きつけといてよく言うぜ。」
- 片目 「俺はギル。ギルガメッシュだ。君らと交渉したいのだが、
- ・・名前を聞いてもいいかな?」
- カル 「カル。カルヴァン。」
- ブック「俺はブックです。交渉・・・してくれるんですね?」
- 片目 「ああ、アレには、君たちのお友達が乗っているのかな?」
- エリー「カルヴァン=サン。ブック=クラウン。
- 認識登録いたしました。あちらは?」
- アズ 「??あの人達は何だろう?」
- エリー「現在、外部武器装備はアリマセン。
- レーザー攻撃が可能です。
- ホーミング機能立ち上げには、時間がかかります。威嚇射撃を準備します。
- 攻撃しますか?」
- アズ 「ええ?!いやいや、ちょっとまて!」
- 片目 「アズ君。そこからちょっと出てきてもらってもいいかな?」
- アズ 「?あの人、何か言ってるみたい。」
- エリー「外部情報は現在カメラのみ機能しています。音声機能を有効にシマスカ?」
- アズ 「聞こえるように出来る?」
- エリー「音声機能を有効にします。」
- 片目 「アズ君。聞こえているかな?」
- アズ 「あ、聞こえた。何ですか?っていうか、誰ですか?」
- 片目 「説明するよ。まず、そこから出てきてくれ。」
- エリー「アズ、エネルギー残量が残りありません。
- エネルギーを充填するか、スリープモードに移行する事をお勧めします。」
- アズ 「エネルギーって・・・どうすればいいの?」
- エリー「ワタシ・・・の・・・エネル・・・ギー・・・源・・・は・・・
- ひか・・・り・・・」
- アズ 「エリー!?え?消えちゃった・・・。エリーどこ?」
- エリー『アズ、ワタシの適合者はアナタです。それだけは、忘れないでクダサイ。』
- アズ 「エリー。うん、わかったよ。」
- 片目 「さて、いくつか質問したいんだが、
- 返答によってはこの銃を下ろしてもいい。」
- 軍人 「中佐!」
- 片目 「まぁまぁ、俺に任せてくれ。
- ここに居るのは、君たちだけかな?」
- カル 「・・・フンッ。」
- ブック「黙秘権はあったりするんですか?」
- 片目 「この銃を突きつけられている状況で、その態度か?
- いい度胸をしているね。」
- リー 「・・・アズ~?カル~?ブック~?
- あのねぇ?・・・きゃっ!」
- 軍人 「(リーを捕らえて)すみません。お嬢さん。」
- 片目 「(アズたちに向かって)手荒な真似はしたくないって言っただろ?」
- アズ 「リー!?」
- リー 「ア・・・ズ・・・」
- カル 「答える!ちゃんと答えるよ!だから、リーを
- ・・その子を放してくれ。」
- 片目 「もう一度聞く。ここに居るのは君たちだけか?」
- カル 「ああ、他のやつも来ない。ここを使っているのを知っているのは、
- 俺たちだけだ。」
- 片目 「なるほど、ひみつ基地ってわけか。俺も作ったな~。」
- ブック「交渉。したいんじゃないんですか?」
- 片目 「そうだよ。」
- ブック「対等な立場だからこそ交渉じゃないんですか?」
- 片目 「離してやれ。」
- 軍人 「しかし・・・」
- 片目 「いいよ。銃もしまえ。"対等な立場"で話をしようじゃないか。」
- アズ 「リー、こっちに」
- リー 「アズぅ。」
- 片目 「ごめんねお嬢さん。痛めたりしてないかい?」
- リー 「あ・・・はい・・・。」
- カル 「これがあんたたちネビュラスのやり方って訳か。」
- 片目 「違うな。これは、俺のやり方だ。こっちは戦争してるんでな。
- まぁ、ひどいやつだと、姿を見せる前に、
- 君たちは全員あの世行きって事にもなるんだよ?俺は紳士的なほうさ。」
- ブック「確かに、それが戦争ってやつだ。」
- 片目 「改めて、俺はアーサー=ギルガメッシュ。
- ロストテクノロジーを探していたんだ。そして、見つけた。」
- アズ 「ロストテクノロジーって・・・エリーが?」
- リー 「エリー?」
- ブック「交渉ってことは、買い取ってくれるってことですか?」
- 片目 「ああ、ただでくれとは言わないさ、君たちが見つけたんだからね。
- だから、交渉だ。」
- ブック「わかりました。」
- カル 「(ブックに耳打ち)おいブック、話し進めて大丈夫かよ。」
- ブック「(こそこそと)正直、それしか方法はないよ。向こうは銃を持ってる。
- いつでも、俺たちを殺せるって訳だ。
- 生き残りたければ商談を成立させるしかない。」
- 片目 「ここは古いけど、最低限の設備はそろっている・・・
- 君たちはジャンク屋かい?」
- ブック「そんなところですよ。捨てられているモノを
- リサイクルしているだけです。」
- 片目 「なるほど。じゃあ、きみの見立て的に、アレは使いものになるのかな?」
- ブック「条件付なら」
- アズ 「エネルギーが足りないって言ってたよ?光とか・・・」
- 片目 「ほう・・・。その条件は、わかっているのか?」
- ブック「わかっています。」
- 軍人 「中佐、ちょっと・・・」
- 片目 「ん?どうした?」
- リー 「ねぇ、私たちどうなるの?」
- アズ 「わかんない。それよりも、エリーを早く助けてあげたいんだけど・・・」
- リー 「さっきから、エリーっていったい誰なの?アズ!」
- 片目 「・・・条件を教えてくれないか。あと、コイツを外に出せるか?
- テストにちょうどいい相手が来たようだ。」
- アズ 「・・・相手?」
- ナレ 「その争いの影は、少年たちに、確実に近づいてきているのであった。」
- (次回予告、以下は2話内のセリフを引用していますので、セリフ的に繋がりはありません。)
- アズ 「(しみじみ)なんでだろ?なんか・・・なつかしい。」
- ブック「(アズへのアドバイス)狙いは一つだ、お前なら出来る。」
- リー 「(うれし泣き)よかった・・・アズ・・・」
- カル 「(八つ当たりな感じで)ああ、俺はお前らとは違うよ!」
- ナレ 「次回『月の騎士達~ラストチルドレン~』 第2話 交渉成立」
- 片目 「(こバカにしたように)俺が可愛がってやるよ」
終